ヒサコラム ドイツ人家族の働き方ーご近所さんの事例ー

  先日、日本では厚労省が示す国民の労働時間制度の改革案の概要が、政府の産業競争力会議で明らかにされました。新制度ではなるべく個々人の事情(育児や介護)にあわせて働き方を選択できるようなフレキシブルな労働政策を積極的に導入しようとしています。時間以外での評価方法などの提示をめざす新制度下で、究極なフレックスタイム制が実現するなばら、シングルの人たちも2週間の旅行に出かけるなど、罪悪感も不安感もなく余暇を楽しむことができ、子どものいる人たちは、もう少し子育てに関与できるような方向になればいいなと勝手に期待しています。が、そうは問屋がおろさないでしょうね。仕事をサクっとあがる前に、上司や同僚の顔色を伺って、労働者の権利である有休消化すらままならない日本では、その素地がまだない気がします。

 この議論をしている会議名が「産業競争力会議」ってのも突っ込みどころ満載。労働時間制度改革が、そもそもは「国民の個人の幸福」が原点にあるはずなのに、議論されている場が産業競争力会議って。。。結局、おっさんらは国益だのGDP世界何位だのっていう経済大国ニッポンの表面的な数字を守りたいだけなのが見え見えなのですから。これじゃぁ、根本的な解決にはならないのではと懐疑的にならざるをえません。視察が大好きな日本のお役人さんは、どうやらドイツの制度である早朝に出勤して午後の早い時間に帰宅するという柔軟な労働モデルなどを参考にして、厚労省では制度改革を進めていくらしいです。

 百歩譲って労働政策にメスをいれて働き方を見直そうとする国勢を少し評価してあげるとして、海外の制度視察に行き、他国の表面的制度だけを見てふむふむ言っている役人のおっさんらにも知って頂きたいので、ドイツで実際にこのフレキシブルな労働制度を利用しているドイツ人家族の例をここで紹介したいと思います。

 前置きが長くなりましたが、そんなこんなで、ナマのとあるドイツ人家族の生活をご紹介します。とりあげるのは、うちのご近所さんで子ども2人とも幼稚園が一緒の一家。2歳、4歳の男の子2人とパパBenny(IT企業勤務)とママSonja(大学勤務)の4人暮らしのごく一般的な家族です。

sonja この家の一日はパパベンニが、6時ちょい前に起床するところから始まります。パパは家族分の朝ご飯と子どもの軽いお弁当(おやつの時間に食べる果物や野菜、サンドイッチなど軽食ボックス)をこしらえて、その後自身は7時に出勤。16時の子どものお迎えまで働きます。一方、後から起きてきたママと子どもたちは、朝食後にママが幼稚園に子どもを送り届けて、そのままママは大学へ出勤します。彼女は時短制度を利用して週30時間の労働契約をしているので、だいたい2時には仕事が終ります。しかも週2回は自宅勤務をしています。

 そして、パパは15時~16時の間に子どもをお迎えに行き(パパがあまりに仕事が忙しいときはママ)、ママと家族が合流。習い事に連れて行ったり、家族時間を楽しんだりします。そして、夜ご飯の担当はパパベンニ。日本ほどの立派なご飯を食べないドイツ人なので、パンだったりパスタを食べて、子どもの寝かしつけをして、あとは大人時間を少し楽しんで一日を終えます。

 このドイツ人家族の生活から私たちが学ぶべき事は、ママが時短だからといって、家事育児をママに全部押し付けないパパベンニの姿勢です。日本の男児は「オレ、フルタイム。オマエ、時短(あるいはパート)。だから、オマエ家事育児も担当」みたいな価値観が当然なこととしてはびこっている気がします。なんなら、自分は理解のあるリベラルな夫で妻が働く事を容認してやっている的な態度をとる輩も少なからずともいるはず。また、逆にママたちも、「時短だから私の方が時間があるから、私が育児も家事もやらなくちゃ。働かせてくれることに理解のある夫がいるんだから、それだけでも感謝しなきゃ」というバージニア・ウルフが泣いちゃうような自己評価を当然のごとく低く見積もってしまう女性たちの思考回路が存在するのも事実です。その背景には男女の所得格差とそれによるパワーバランスもあるので根深い問題なので、簡単には片付かない問題ではありますが・・・。そう、「オレフルタイムオマエジタン」的上から目線の価値観こそが、諸悪の根源なのです。

 このような状況下にある日本では、時短のママはけっこう辛いと思います。ママが家事も育児も全部抱えこんでしまい、いっぱいっぱいになってしまうからです。これは直接的にも間接的にも子どもに悪影響を及ぼします。時間的ゆとりを持つための時短なのに、めっちゃ辛い感じになる。それに比例して心のゆとりも失ってしまうという負のスパイラルに陥ってしまうからです。

 これは社会の構造的問題だ!って、なんでもそれに収斂したところで、なんの解決も見ないので、もっと具体的な例をみて、帰納的に政策を立ててもいいんじゃね?と個人的に思ってしまうわけです。厚労省の役人の知り合いがいる方はぜひ教えてあげてください。だって、事件は現場で起きてるんだっ!(踊る捜査戦見てないけど)。他国の制度の表面をさらって満足するのではなく、その制度を実際に利用して、どのように人々の生活に影響を与えているのかを考える事が大事だと思います.

ヒサコラム ドイツ人家族の働き方ーご近所さんの事例ー への7件のフィードバック

  1. kei のコメント:

    とても興味深かった。考察をそこに持っていくところさすがヒサコです。そしてうちとは雲泥の差すぎて、読んでて辛くなってきた・・・T^T全ては長時間労働の悪。。
    彼より稼いでないから言えない、という考えはドイツ人的にどうなんでしょ?ありはあり?
    あと新鮮だったのは、ドイツの食事が手がこんでいないということ。そうか〜そりゃ日本のお母さんは大変じゃないか!長時間労働の風潮と晩ご飯豪華主義の圧力!日本は団塊世代の専業主婦の増加によりそうなっちゃったのかな?昔は缶詰とかもよく食べてたらしいし。

    • hisako のコメント:

      keiさま、そうなのよ、全ては長時間動労の悪。女性の労働支援とか出生率上げるとか大々的に言っているけど、男性の働き方を見直さない限り、何も変わらないよね。

      そして、ドイツ人の夜ご飯。基本的に火を使わないです。何食べてるかって?Kaltes Essen(冷たい食事)といって、パンにチーズやハム、きゅうりやトマト、そしてバターべっとり塗って食べるっていう。以上!

      日本のおかん、がんばっているわ。毎日ね。

  2. 705 のコメント:

    ひさこさん
    同意見だわ。パパ ベンニの姿勢を見習って欲しい~。豊かな生活は心にゆとりがなければ、出来ないからね。

    • hisako のコメント:

      705さま、
      おっしゃるとおり、心のゆとりであり、そのためには時間のゆとりも必須ですね。パパベンニ、先週はゴミ捨てしながら、笑顔で手をふってくれた。ゴミ捨てながらの笑顔、いいよねー。

  3. ivy のコメント:

    考察を「働き方」ではなく「パパの意識」に持っていくところ、さすがヒサコです。
    とても興味深いけど、うちと違いすぎて読んでてつらくなった・・・(T_T)
    誰か、深夜残業量と熟年離婚の相関を調べてほしいわ。
    稼ぎと発言力はドイツでも比例は比例、、?
    あと新鮮だったのは、日本の晩ごはんは手がこんでいるほうなのか、ってこと。
    残業社会と晩ごはん豪華主義の圧力で、そりゃー日本のハハは大変だわ!

  4. akko のコメント:

    ちょっと別視点から質問です。ママはお仕事14時までだけど、パパが子供のお迎えとか、簡単とはいえ夕食の準備をしてくれるって事ですよね?その間、ママさんて何してるのかな?ってところが興味ありです!

    • hisako のコメント:

      Akkoさん、ご質問ありがとうございます。ママは仕事のあと、家に戻り、子どもとパパと合流。公園で家族全員で過ごしたりと、やたら家族単位の行動が多いですね。パパが夜ご飯準備中、ママは子どもの世話してます。かなりの確率で家族全員一緒にいますよ。私からすると、結構違和感ありますが。。。うちの集合住宅の共有庭で、家族が合流するドイツ人家族をよく見かけますので、子どもが小さい場合は、一般的なのかも。。。

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