hisaコラムVol.9ー陣痛なんて耐えなくてよくない?お産は母子ともにリスクをともなう大イベント。せめて痛みだけでも取り除いてほしい!

陣痛なんて耐えなくてよくない?お産は母子ともにリスクをともなう大イベント。せめて痛みだけでも取り除いてほしい!

th_けんと 私はドイツで2度の出産を経験しました。ドイツの健康保険に加入していれば、基本的に出産は無料。妊娠中の検診もほとんどが保険でカバーされます。しかも、陣痛が始まってから、どこの病院へ行っても、必ず受け入れてくれます。もちろん、日本でも地方自治体からの出産祝い金など嬉しい制度がありますが、日独で大きく違うのは、分娩時に麻酔分娩をその場で選べるし、保険がカバーしてくれるという点です。今回は、自分の出産体験をもとに、制度的かつ文化的側面から、日本ではなぜ無痛分娩がまだ特異な位置づけにあるのかを考えてみたいと思います。

制度面の違い

日本では、基本的に、妊娠中に検診に通った病院ないし、クリニックでお産するというのが一般的ですね。しかし、小さなクリニックでは、無痛分娩のためだけに麻酔医を常勤させるには、コスト面からしても、とても難しいことです。従い、日本では予約なしの無痛分娩というのは、基本的には不可能ということになります。

 一方ドイツでは、検診は近所のクリニックに行きます。陣痛が始まったら、検診内容がすべて記載された母手帳(ちなみに、『母子』ではなく、子ども手帳は別にあります。)を持って、産科のある総合病院でお産をします。総合病院ですから、基本的に、麻酔医が常駐するシステムが整備されています。従い、陣痛が始まってから病院にいって、急に無痛分娩がしたいと申し出てることも可能です。しかも、お金がかからないので、産む側としても、その場の気分や体調で、気軽に決めることができます。100万円かかると言われると、多くの方は尻込みすると思いますがそれがないのです。

 文化面の違い

OLYMPUS DIGITAL CAMERA最近では、ずいぶんと人々の意識も変化してきましたが、しかしながら、未だに、日本では「お産は痛みを伴ってこそ母となり、母子の絆が構築される」的ディスコースが染み付いているように感じます。そのため、無痛分娩で痛みを回避したいと言うことは、わがままであり、母となるための痛みという洗礼を退けるという行為とみなされることもあります。加えて、お産自体病気でもなく、いわば、身勝手な行動”(?)による無痛分娩は、健康保険の適応外です。つまり、『当然ながら自己負担で払ってね』というわけです。

 一方、ドイツでは、個人の選択を尊重するという観点から、国がきちんと保護するシステムができています。自然分娩も無痛分娩も帝王切開も、母親が選択した分娩に対して、国は差別することなく無料サービスを提供しています。

もちろん、国がきちんと保護しているがゆえに、日本のように病院同士の競争原理はあまり働いていません。従い、日本のように、いたれりつくせりのお産というのはまず望めません。入院中の食事なども、お昼は少し暖かいものがありますが、夜は、いわゆる『カルテスエッセン』・・・といえばまだ聞こえはよいですが、これは機内食か!とつっこみを入れたくなるようなクオリティです。しかし、もちろん、その食事代も、入院もほとんど無料です。こういったドイツの現状と比べると、日本における、自然分娩が「普通」で、無痛分娩や帝王切開を自ら選択する場合は、ワガママだから自己負担というと言う国が前提とする考え方に、どうも違和感を感じます。

 お産のフルコース(一人目)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA一人目のお産時、陣痛が始まってすぐに近所の総合病院へ行きました。夜12時過ぎです。開口一番「痛いのは嫌いなので、無痛(PDA)でお願いします。」と執拗に助産婦さんにお願いしました。あまりのしつこさからか、子宮口がまだ4センチしか開いてない状態で、無痛分娩が開始され、陣痛の自覚的痛みはみごとに消えました。モニターの波をみて、アンパン片手に、「いま陣痛きてるね」なんて、他人事のように話していました。結局、陣痛促進剤を投入しても、子宮口は10センチ開かなかったため、急遽、帝王切開へ切り替えることに(へその緒がおそらくあかちゃんに巻き付いていた可能性を指摘されたので)。無痛を使った普通分娩でのイメトレをしてきたため、帝王切開になったショックを隠しきれませんでしたが、すべて保険でカバーはされました。このように、一人目のお産ではしっかりと、自然の陣痛の痛み→無痛分娩の麻酔→帝王切開というフルコースを味わったのです。

染み込まれたディスコース(二人目)

二人目のときは、お産もこれで最後と決めていたので「無痛分娩ではなく、自然分娩を人生で一度、経験してみよう」と思っていました。一人目の痛みなどすっかり忘れていたのです。日本人の妊婦さんの殆どは麻酔なしの自然分娩を経験しているし、私にもできるはず。都市伝説的な鼻の穴にスイカを入れるくらいの痛みとはどんな感じなのか体験してみようと、2人目の余裕からか、そんな意気込みで病院入りしました。

 そう、日本では「痛みを伴って産むことは、母になるための洗礼であり、そうして子への強い愛着と絆が生まれる」みたいなディスコース。日本で生まれ育った私にも、しっかりと染み付いていたのです!

 痛みに堪えられない私

しかし、30分もしないうちに、私は痛みに耐えられなくなりました。陣痛って本当に痛いんですよね。なんですか、あの痛み!!!ということで、チキンな私は助産婦さんを呼びたてて「すぐに無痛分娩に切り替えてほしいです!」と言いました。制度が整備されているため「オッケー、ただ子宮口があと2センチ開いたらね」という助産婦さんの一言で、無痛分娩の準備が始まりました。準備中、「ハーブの入ったお風呂とお散歩どっちがいい?」と聞かれ、すかさず楽そうなお風呂を選択。全くアロマを楽しめない苦痛なお風呂でしたが、20分ほど浸かると、子宮口が6センチまで開き、無痛分娩に速やかに移行してもらえました。ちなみに、麻酔中も普通に歩けます。

またモニターを見ながら、子宮口が10センチになるまでしばし仮眠。なぜかBGMのラジオに懐かしいBig Mountainのレゲーが流れ、ノスタルジックな気分に浸りながら夫婦で仮眠を取りました。突然の股に感じた違和感で目が覚め、助産婦さんを呼ぶと、すでに頭が出てきているとのこと!自分では力めないので、助産婦さんの合図で2回ほどうーーんと力むと、あかちゃんがにょろっと出てきました。

 私は思いました。なんで痛みに耐える必要があるのかと。。。昔は歯の治療も麻酔がなかったと思いますが、今は当然のように皆、麻酔をかけて歯の治療をします。ってことは、あと数十年経てば、日本でも制度面などの条件がいくつかクリアされれば、無痛分娩が一般化するのでは???と。

陣痛の痛みに耐えなくてよくない?

 これを阻んでいるのは、クリニックでの分娩であるため麻酔医の常勤が難しいという制度面と痛みに耐えてこそ母になるというディスコースの文化的要因だと思います。陣痛の痛みに耐える必要性はどこにあるんでしょうか?根拠はありますか?お産はそれでなくとも、リスクが高いライフイベントです。お産の時の痛みを軽減してもいいと思うのです。

 せっかく日本人の華岡青州が麻酔を日本で成功させてくれたじゃないですか。本当に出生率を上げたいと国が思っているのなら、労働政策などももちろんですが、ミクロな視点で、妊娠/出産にかかわる支援制度を根本的に見直す必要があるのかもしれません。もっと個人の幸福という視点から制度を考えればいいのに。GDPだの失業率だのっていう経済的数字に囚われてばかりいては、国民を幸せにする制度はできないのではないでしょうか。

hisaコラムVol.9ー陣痛なんて耐えなくてよくない?お産は母子ともにリスクをともなう大イベント。せめて痛みだけでも取り除いてほしい! への2件のフィードバック

  1. KEKO のコメント:

    日本では、産みの苦しみを味わうのは母として当然って風潮、ほんと根強いですね。それどころか、陣痛の苦しみを表に出すのさえ忌避されてる感があります。お陰で私もドイツで次男を出産した際、事前にPDAを申し込んでいたにも関わらず、本番の必死度アピールが足りず自然分娩になりました。
    陣痛に苦しみながらも、”まだ機が熟していない(=子宮口が開いていない)のにPDAしてって言うのも忍耐力がないみたいでハズカシイ。。”という日本人特有の羞恥心が働いてしまったのです。今にして思えば、あの場で誰に遠慮する必要があったのでしょう!?

    これからお産に望む皆様、PDAを希望するなら早めの痛いアピールもお忘れなく!でないと押しの強い各国の産婦さんに紛れて、希望が通らないなんてこともありますからね♡

  2. hisako のコメント:

    KEKOさん
    言葉の壁を超越してPDAを叫び続けるととおりますね。
    かなり大げさに痛いアピールしました。それくらいがちょうどいいです。
    控えめ態度で臨むと、ドイツでは何にも誰も察してくれないですからね。

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