重度自閉症の子を持つ駐在ママの体験記〜アメリカ〜日本〜ドイツ

今回、アメリカ、日本、そして現在はドイツで駐在生活を送っているママにお話をお伺いしました。お子さんは重度の自閉症で、現在はドイツの特別養護学校に通っています。

Qまず自閉症に気づいたのはいつですか?

息子さんが描いた絵。

おかしいと思ったのは1歳の頃です。名前を呼んでも振り向かない、指差しをしない、動かない(ハイハイがやっとで、つかまり立ちもままならず、上にあるものに興味がないのか、ヤル気がないように見える)、発語が無い、といった行動がきっかけでした。自閉症は100人いれば100人症状が違うと言われていますが、自閉症の判断基準の代表的なチェック項目には他に、泣かない、抱っこを嫌がる、目が合わない、表情が乏しい、ごっこ遊びをしない、といった症状もあります。息子はこれらの項目の中のごっこ遊びをしないにもドンピシャでした。

自閉症も子どもによって症状が様々ですが、息子は今でもエスカレーターには一人では乗れません。可能ならどんなに高いビルでも階段希望の彼です。自閉児の一部には階段が坂に見えるらしく、それが動くなんて脅威らしいです。ただ、私も疲れるので、私が一緒の時はトレーニングだと思って強制的に一緒にエスカレーター使うようにしています。

Q、来独の際の悩みや現在のドイツの生活環境について

自閉症の息子さんの絵。そこらじゅうに動物たちというタイトルが英語で書かれています。

日本からドイツへ移る際、日本人学校で知的障がいの子を受け入れる事がないだろうということからドイツの現地校に入れることを考えましたが、私が完全にドイツ語を理解できないので悩みました。
主人がドイツに先に行き、デュッセルドルフと今現在在住しているデュッセルドルフ近郊の2箇所の現地の特別養護学校を見学しました。どちらも校長先生がとても親切な方だったので迷いましたが、現在通っている特別養護学校の校長先生は、子どもを通わせている日本人ママを紹介してくれ、ドイツに来る前から学校の状況をその日本人ママが細かく説明してくれたので、精神的な安心感も得られ現在の学校に決めました。たまたま学校周辺に家が見つかったという理由もあります。

ドイツでの壁はやはりドイツ語ですね。学校の申し込み時など、親である私が学校側とコンタクトを取るのに、ドイツ語という言葉の壁にぶち当たりました。学校側は英語のできる先生を配置してくださるなど、非常に配慮して下さったので、初めの頃は英語でコミュニケーションを取ることができ、さほど問題を感じませんでした。ただ、手続きの書類や学校からのお手紙がドイツ語なので、手続きや保護者の個人懇談会には日本人ママが同席して助けてくださったり、学校からの通知も日本人ママに質問をして学校行事がドイツ文化に沿ってスケジュールが組まれている事を伺ったり、辞書と格闘して取り組むといった必要がありました。今でも格闘しています(笑)。

担任の先生との毎日交わしている子供の様子や関わっているクラスでの必要事項は連絡帳を使ってやり取りしていますが、これは英語でやり取りをして貰っています。

子供はバス通学ですが、運転手さんや助手の方が半年毎に変わっています。変わらない地域もあるのかもしれませんが私は半年毎に変わりました。今までに5組の担当者の方にお世話になりましたが、そのうち英語でやり取りが出来たのは1組だけでした。ここでもドイツ語の壁があり日本人ママに助けていただく事が多々あります。

学校関係だけでなく行政手続きでもドイツ語の壁があります。私たちが住んでいる街はデュッセルドルフからアウトバーンを使って15分程の所にあるのですが、英語や日本語が通用する(日本語が通用するは病院・薬局ですが)デュッセルドルフとの違いを行政の場でとても感じました。行政の場に書類手続きだけだと思って主人の会社の現地人に記入事項をチェックしてもらい完璧な形のものを持っていけば大丈夫と足を運んだ場で面と向かって「何故ドイツ語を話せる人間を連れてこないんだ!」と叱られました。行政の手続きも何度か日本人ママが付き添ってくれました。会社の現地人にも来てもらうこともありました。付き添いが難しい場合でも予約した時間に電話で対応してもらえる人間を主人の会社で待機してもらうようにしています。

 

Q子どものドイツでの学校生活について

クリスマスカードに描いた絵

うちの子どもは、「住めば都」的な性格のため、アメリカでも日本でも、そして今のドイツの学校にも楽しく通っています。ドイツ語はできませんが、アメリカでは英語でセラピーを受けていたので、英語への抵抗がなかったため、比較的馴染みやすかったと思います。伝わればなんでもいいので、エセ英語でもなんでも、本人に考えさせて会話させています。

繰り返しになりますが、ドイツでの壁はやはりドイツ語ですね。例えば、息子の学校の往復は送迎バスがつきますが、いくら先生方が英語で対応してくれるとはいえ、送迎バスの中はドイツ語の世界です。そこで、息子にたくさん話しかけてくれる子がいるんですが、それがドイツ語なので、息子にとって苦痛になってしまいました。校庭で(ドイツ語で)話しかけられた際も、走って逃げるということが始まったので、しばらく送迎バスをお休みさせてもらいました。クラスのお友達は、英語を勉強して、簡単な英語を使って会話をしてくれていたのですが、周辺的なドイツ語の世界が子どものストレスになっていたのが問題だったくらいです。学校の往復に送迎バスがあるため、なかなか他の親御さんと出会う機会がありません。もう少し他の親御さんといろいろなことが共有できるといいなと思います。

 

Qアメリカでの生活はどうでしたか?

知的障がいなので、それでなくともコミュニケーションに支障をきたすことが多いため、アメリカでは普段の会話も出来るだけ英語を使うことで、先生とのセラピーが円滑に進むようにしていました。普通に教えても覚えることはできないとわかっていたので、アメリカで子どもが言葉を学ぶときに使ったスピーチセラピーABAを使って、徹底的に教えました。

ABA(Applied Behavior Analysis・応用行動分析)というのは、自閉児指導大国アメリカのカリフォルニア州、特にUCLAで療育のベースにしている言語とコミュニケーションのトレーニングと指導メソッドです(http://www.children-center.jp/aba/)。このメソッドは、何度も繰り返し教えながら、達成するとご褒美をあげるというのが基本なので、イルカや犬の調教だといって反対する人もいます。でも、この基本が身についていると勉強だけではなく生活における全ての行動をABA方式で指導できるため、現在も将来も息子にとっては非常に有効で大切なメソッドです。そして達成した際に子どもを褒めるのに、日本人ではまず無理な位の大げさな褒めっぷりを親たちは学ぶ必要がありました。このABAは24時間体制で向き合ってやらなくてはならないので365日体制でセラピーがあり、週末は主にこのABAを親が学ぶ為にセラピストが来たりと、はじめは大変でした。自身の体験から、このABAは知的障がいが重ければ重いほど本人の助けになると思います。

 

Q、国が変わるといった環境変化での言葉や文化の壁は?

アメリカから日本へ帰国する半年前くらいから、日本語を少しずつ入れて会話をするように心がけました。英語だと「赤い」も「赤」も「Red」で済んでいたものが、日本語では形容詞・動詞・名詞が細かく設定されているので、それを子どもに教えるのに苦労しました。お受験ママみたいになりましたね。

また、日本に戻ってからも苦労しました。日本語はひらがな、カタカナに加え漢字があります。表記が漢字の駅名や町内の看板が多いので、読めた方が子供の人生が楽になると思い、またお受験ママみたいになって、ABAを使って覚えさせました。幸い、知的障がい児が得意なひたすら覚えるという単純さが功を奏して、目の前に出たものを記憶するという作業は出来ました。でも覚えた事を汎化する作業は知的障がいの子には難しいので諦めています。最低限のやり取りをする為のツールになればというような気持ちで国語と算数は教えています。このカリフォルニアでの徹底したABA指導のおかげで、子どもとのコミュニケーションやいろんなことを教えるのに、有益だったことは特筆すべき点です。

 

Q知的障害の子どもを持つママパパへのアドバイス

私は、息子が自閉症なのではないかと疑った頃から、日本の自閉症児を持つ親の会「NPO法人つみきの会」http://www.tsumiki.org)」にお世話になっています。たくさんの先輩の体験などを聞くと、自分自身も非常に楽になり、子どもも楽になるので、繋がることの大切を実感しました。

言葉の壁が分厚い
海外に来て思うのは、とにかく言葉が壁です。子供にも親にも多大なストレスがかかるのでドイツ語の補助がある環境か、ドイツ語で生活出来るレベルでないと公的手続きをする場や児童相談所の病院で、かなり打撃を受けると思います。子供は毎日ドイツ語が飛ぶ教室で過ごすので、繊細な子にはおススメできません。
一方で、アメリカ・日本・ドイツでの生活を相対的に比較してみると、日本の教育環境と比べたらアメリカ、ドイツは雲泥の差で、日本にいた頃より息子は楽しそうに学校に行きます。アメリカでもドイツでも、学校がスタートしたら「シャドウ」という付き添いの人がずっと付きますよと言われました(ドイツでは英語が話せるシャドウを希望したため、まだ見つかっていませんが)。。。

あと、子どもの接し方について文化の差を非常に感じます。欧米では子どもが泣いて地団駄を踏んでいても、周囲の人は大抵は親子のやり取りを(興味がないからなのか)暖かく見守っています。でも日本の場合は、他人に迷惑をかけてはいけないというのが根底にあるので、その場で親が直ぐに子供を叱らないと親にクレームが来る印象が強いです。親は頑張っているのに、この周囲に対する配慮の無さからくるストレスで鬱になるお母さんが多いです。日本にも良いところでもあるのですが、障がい児には生活しづらい感があります。ドイツやアメリカではそういったストレスが殆どないので生活しやすいです。
私たちのこの環境は本当に恵まれていると思います。ご近所の方々も英語で会話するのは無理なのですが、とにかく優しい方に囲まれているのでストレスが全くありません。何よりも日本人ママがいらっしゃった事がとても幸運だったと思っております。

また、今住んでいる場所はデュッセルドルフからアウトバーンを使って15分程の場所なのですが適度な田舎で本当に良かったです。なによりも子どもが楽しく学校に通っているので、安心して生活できてます。

デュッセルドルフは英語でやり取りができる都市ですが、少しでも離れると英語は通用しない事を念頭に置く必要があります。行政の人間は本当に厳しいです。夫は市役所で一度処理を受け付けてもらえず帰宅した経験があります。やはり凹みました。

診断書は日本で用意する

ともかく行政関係で必要になってくる書類で大事なのが「診断書」になります。

こちらに来てからも都市の児童相談所の専門の医師を紹介され子供も連れて色々な問診を受けますが(こちらは医師は英語OKでしたが、書類担当の係はドイツ語のみの対応で医師が翻訳をしてくれました。)、日本の専門医が発行しくれた英語の診断書は必須です。この日本で出してもらう診断書は一枚あれば十分です。

オリジナルはご自身で管理してください。ドイツの学校に通わせる手続きや障碍者関係の手続き等に診断書を求められますがコピー可です。

ドイツは言葉の壁はあるものの、障害児とともに住みやすいと感じています。ぜひ、楽しく有意義なドイツ滞在にしたいですね。

インタビュー りんごの木管理人 吉澤寿子

2017年11月

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*