ヒサコラムーTrivagoオフィス見学〜労働インセンティブの視点から

 日本政府は働き方革命を推進しながらも、抜本的改革には至っていないのが現状です。長時間労働をしている割には、生産性の観点ではドイツのほぼ半分という日本。おもてなし・サービス精神など、ドイツが日本から学ぶべき事も多いですが、働き方という点では、日本がドイツから学ぶことが沢山あると感じます。その中でも、労働時間の短縮、機械化など仕事の効率化の観点からの議論や制度改革は、日本でも少しずつなされていますが、ここでは、あえて社員の労働インセンティブという切り口から、働き方を考えていきたいと思います。
今回は社畜と化しているニッポンのサラリーマン、その中でも日系企業のドイツのトップとして駐在しているサラリーマン社長たちを率いて、トリバゴのオフィス見学を決行してきました。そもそも、トリバゴではオフィスのことをキャンパスと呼びます。働く場だけじゃぁないよ感を強調しているのかもしれません。なぜなら、学びの場でもあり、遊びの場でもあると据えられているからです。トリバゴは、ここ数年で社員は約800人〜1600人程に急増。現在はハーフェンに自社ビルを建てています。もともと、大学生らが集まって作られたITベンチャーで、ドイツのfacebookと称されるほど、IT業界で急成長を遂げている会社です。
今回は見学を通して見えた、いくつか特徴的な点を紹介します。この特徴すべてに共通している点こそが、従業員の働くインセンティブを高めることに関連しています。

朝食ブッフェの一部

1、食堂とは別にオフィスの中にあるビュッフェスペース

ここには、ムズリー、さまざまなフレッシュフルーツ、ドリンクが食べ放題&飲み放題です。なんとビールまで用意されていました。朝食は家で食べてこい!その後にオフィスで仕事だ!ではなく、家とオフィス、つまりは仕事とプライベートの境界線がいい感じに曖昧化されていると思いました。

プレイステーションコーナー

2、プレイステーション、し放題のスペース

さすがに、お昼からプレイステーションをやっているスタッフはいませんでしたが、金曜日は夕方からスタッフたちが集まって、ビュッフェスペースにあるお酒(コロナビールまで常備!)を飲みながら、夜まで盛り上がるとか。家にあるような心地よいチェアがたくさん置かれ、友達の家でゲームをするような印象のスペースです。ここにも、家と仕事場の境界線が曖昧化されています。日本のITベンチャーであるチームラボ率いる猪子さんは、イノベーションを起こすためには、やはりチームでコミュニケーションをとることが大切だと言っていたのを思い出しました。このような娯楽スペースは、おそらく社員間でのコミュニケーションの場の一部として活用されているのです。
3、チーム懇親&娯楽バジェット
チームごとに与えられたバジェットで、お料理教室にチームメンバーで出かけたり、イベントに参加したりというお金が割り当てられています。50カ国以上の多国籍なスタッフで構成されるため、毎月イベント企画されるそうです。ちなみに日本人スタッフが担当になった時、日本食のお料理教室やカラオケを企画して、グループスタッフとわいわい盛り上がったとのことでした。これも、チーム内でのコミュニケーション、そして、全く仕事とは違う体験を通してのアイデアの活性化などと関連しているのではないでしょうか。その他にも週に数回、トレーナーがついてランニングや筋トレをライン川周辺で行ったり、仕事とは全く関係のない娯楽的イベントがたくさん設けられています。

オールドアメリカン的なミーティングルーム

4、週1回のトリバゴアカデミー

毎週水曜日の夜に、色々な業界で活躍している人たちを講師として招き、セミナーを開催しています。その参加も自由で、社員以外の外部の人々も参加できます。自分とは異なる立場や価値観に触れる機会を提供しながらも、強制せず、外部にもオープンであるえことは、延いては知的な地域貢献活動でもあり、会社としての存在意義として、学ぶところは多いと思います。
5、チャレンジできる環境づくり
自分のやりたいことを会議で通すには、兎にも角にも数字で示すことが要求されると伺いました。これだけ多国籍なスタッフが集まると、忖度可能な雰囲気は生まれないのかもしれません。例えば、ウォシュレットがとてもいい!というのを、日本人が感覚で力説しても、それは異文化の人にはすぐに納得してもらえないものであり、文化の共有された価値観を超越して、数字でそれを示す必要があるわけです。また、入社何年目とかポジションに関係なく、数字で説得できれば、その企画が通るといいます。

ブランコの部屋。1〜3人くらいのミーティングルーム。

6、無駄を省き、集中できる環境づくり

基本的にはLINEのようなソフトでチャットあるいは通話をするため、オフィスに必須だと私が勝手に思っていた電話が存在しません。とても静かなオフィスで、電話を含め、他者と話をする場合は、その人数、目的や気分に合わせたミーティングルームで行います。あらゆるコンセプトのミーティングルームは、シリコンバレーの有名IT企業を彷彿とさせるものでした。
7、労働インセンティブの与え方
このような労働環境では、日本の社畜サラリーマンは、逆に自由すぎて、戸惑ってしまうかもしれません。なぜなら、遊び呆けようと思えば、いくらでも遊び呆けられる環境だからです。ではなぜ、そんな自由な労働環境で、スタッフたちは自らを鼓舞し、結果を出し続けているのでしょうか。
一見野放しのように見える従業員のこの労働管理のあり方にポイントがあると思います。自由すぎる中では、従業員自身のセルフ管理能力が問われます。トリバゴでは自由の極みとして、マヨルカ島で働いたっていいそうです。飛行機代も宿代も会社持ち。ただ、きちんと仕事さえしてくれればいいのです。ここまで自由を与えられると、フーコーのパノプティコンのように自分を律し、自分自身を制するようになるのかもしれません。

オープンスペースの一部。さりげなく社員間のコミュニケーションをとる場がここかしこにある。

プレイステーションを置かれて、どうぞ好きなだけやっていいですよ、マヨルカ島で、気分転換がてら場所を変えて仕事してもいいですよ、と言われると、逆に自分を制し、自分の中からやる気が湧いてくるのかもしれないのです。そういう労働インセンティブの与え方がスタッフのお話を聞いていて、見えてきました。

もちろん、労働時間の見直しも必須ですが、社員が仕事へのやる気とアイデアを出すためには、時間で区切るのではなく、仕事と遊び、労働時間とプライベートの境界をあえて曖昧にすることで、仕事の質・生産性を上げるような取組がされているという方法も学びました。これは、いち個人の見聞録にすぎませんが、自分自身が自分を管理し、会社に貢献できるという仕組みの中に、日本の働き方改革へのヒントがあるのかもしれないと思いました。まず日本では高等教育しかり、全体の教育改革から始める必要があるとも実感しました。

文責 管理人ヒサコ 

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